はじめに
2025年7月20日に実施される第27回参議院議員選挙は、日本の政治の方向性を左右する重要なイベントです。全国で124議席が争われる中、福岡選挙区では3議席を巡り、13人の候補者が立候補しています。
この選挙は、2024年10月の衆院選で自民党が過半数を失い、石破茂首相が少数与党として統治する中で行われるため、与党の勢力維持と野党の巻き返しが注目されます。本記事では、福岡選挙区の候補者、争点、政治的背景を詳しく解説し、選挙の展望を探ります。
全国の政治的背景
2025年の参院選は、石破茂首相が2024年9月に自民党総裁に選出され、首相に就任して約10カ月後のタイミングで行われます。
しかし、2024年10月の衆院選で自民党は過半数を失い、連立パートナーの公明党とともに少数与党として政権を運営しています。
石破首相は、贈答品スキャンダルや立法の停滞により支持率が低下しており、与党にとって厳しい選挙戦が予想されます。一方、野党の立憲民主党や日本維新の会は勢いづいており、福岡でもその影響が見られる可能性があります。
福岡選挙区の概要
福岡選挙区は、参議院の多人数選挙区の一つで、3議席を争います。13人の候補者が立候補し、与党、野党、新党、独立系の多様な顔ぶれが揃っています。
候補者一覧
候補者一覧
政党 | 候補者名 | 現職/新人 | 年齢 |
参政党 | 中田優子 | 新人 | 35 |
チームみらい | 古川葵 | 新人 | 34 |
国民民主党 | 川本健一 | 新人 | 45 |
立憲民主党 | 野田国義 | 現職 | 67 |
公明党 | 下野六太 | 現職 | 61 |
自由民主党(自民党) | 松山政司 | 現職 | 66 |
日本維新の会 | 伊藤博文 | 新人 | 56 |
日本共産党 | 山口祐人 | 新人 | 35 |
れいわ新選組 | 沖野理恵 | 新人 | 50 |
日本保守党 | 森健太郎 | 新人 | 47 |
社会民主党 | 那須圭子 | 新人 | 65 |
NHK党 | 村上茂治 | 新人 | 54 |
日本誠真会 | 富永正博 | 新人 | 47 |
候補者について
中田優子 (35歳, 新人, 参政党)
- 背景: 不動産会社員・宅地建物取引士。屋久島おおぞら高。
- 特徴: 日本の経済的な衰退、特に生活費の高騰を強く感じ、一般市民の視点から政治を変える必要性を訴える。消費税の減税、積極財政、過剰な移民規制、第一次産業への予算増額による食料自給率100%達成、教育改革、そして子育て支援策として0歳から15歳までの子供一人当たり月額10万円の支給など、参政党の主要な政策を紹介。彼女はまた、国民一人ひとりの投票による意識改革と行動が、日本を立て直すために不可欠であると強調。
- 政党公約: 参政党の具体的な公約は確認できていないが、党の政策として憲法改正の推進、地方分権、教育改革を掲げている。
- 参考URL: 参政党
古川あおい (34歳, 新人, チームみらい)
- 背景: チームみらい員 元データエンジニア・厚労省職員▽東大。
- 特徴: 34歳の若手候補者。新党チームみらいが掲げるテクノロジーを活用した社会変革。政治資金問題の透明化、社会保障制度の改善、国民の声の政治への反映といった具体的な課題をテクノロジーの力で解決していく方針。
また、古川氏自身の経歴や、少人数でも行動を起こす政党としての新党チーム未来の独自性も示されている。
川本健一 (45歳, 新人, 国民民主党)
- 背景: 元宇宙関連会社取締役・ソニー社員。一橋大。
- 特徴: 減税による手取りの増加、経済成長の実現、そして日本の防衛力強化を主な公約として掲げる。失われた数十年と称される日本の現状を変え、豊かな日本を取り戻すために、教育、科学技術、子育て支援への投資を通じて日本の産業競争力を高めることを訴える。
食料とエネルギーの自給率向上にも言及し、自国を自ら守る重要性を強調。 - 政党公約: 国民民主党の公約「手取りを増やす夏」では、年収178万円への壁引き上げ、ガソリン税減税、再エネ賦課金の停止を目玉に据える。電気代負担軽減や所得税の年少扶養控除復活も提案し、30歳までの若者向け所得税減税を強調。
- 参考URL: 国民民主党公約
松山政司 (66歳, 現職, 自由民主党)
- 背景: 福岡県出身。1959年1月20日生まれ。福岡県立京都高等学校、明治大学商学部卒業。1996年に福岡青年会議所理事長、1999年に日本青年会議所第48代会頭を務め、2001年に参議院福岡県選挙区から初当選。現在は参議院自民党幹事長を務める。
- 特徴: 経済対策によるGDPの成長と賃上げの達成を強調。物価高対策、特にガソリン価格の引き下げや電力・ガス料金の補助に言及し、現金給付や医療・介護分野の処遇改善といった国民生活支援策についても触れる。
- 政党公約: 自民党の公約「日本を動かす 暮らしを豊かに」では、強い経済、豊かな暮らし(国民所得5割増)、揺るぎない日本(外交・安全保障)を掲げる。
- 参考URL: 自民党公約
野田国義 (67歳, 現職, 立憲民主党)
- 背景: 1958年6月3日生まれ、福岡県八女郡立花町(現八女市)出身。福岡県立福島高等学校、日本大学法学部政治経済学科卒業。1993年に34歳で八女市長に初当選(全国最年少市長)、4期16年務める。2009年に衆議院議員初当選、2013年に参議院議員初当選し、現在2期目。
- 特徴: 政治と金の問題、特に企業献金の廃止を強く訴えています。また、食料安全保障の重要性に触れ、農業従事者の減少と高齢化が深刻な問題であると指摘。さらに、物価高対策として消費税の軽減税率適用やゼロ化を提言し、無駄な基金の活用による財源確保の可能性にも言及。
- 政党公約: 立憲民主党の公約「物価高から、あなたを守り抜く」では、食料品の消費税を2026年4月から1年間ゼロ%にする政策や、国民1人当たり2万円の「食卓おうえん給付金」を掲げる。ガソリン税の暫定税率廃止も提案。社会保障(年金・医療・介護)の充実、子育て支援、ジェンダー平等の推進も重視。
- 参考URL: 立憲民主党公約
下野六太 (61歳, 現職, 公明党)
- 背景: 1964年5月1日生まれ、福岡県北九州市八幡西区出身。島根大学教育学部卒業、福岡教育大学大学院修士課程修了。30年間中学校教員として保健体育科を担当し、第59回読売教育賞最優秀賞や文部科学大臣優秀教員表彰を受ける。2019年に参議院議員初当選。
- 特徴: 政治の最も重要な役割は国民の命を守ることであると述べ、特にひきこもり支援の重要性を強調。政府機関の当初の消極的な反応にもかかわらず、首相に直接働きかけることでひきこもり支援を国の経済財政基本方針に明記させたと説明。現在の物価高が国民の生活に与える影響を指摘し、電気代、ガス代、ガソリン代、米の価格に対する政府の支援策に触れている。
減税と給付金の両方を通じて国民の生活を支えるという公約を掲げている。 - 政党公約: 公明党の公約では、物価高対策として「生活応援給付」を掲げ、マイナポイントを活用した迅速な給付を提案。教育無償化の拡大、子育て支援(産後ケア・家庭支援)、災害対策の強化を重視。憲法改正には慎重な姿勢を示している。
- 参考URL: 公明党公約
松山政司 (66歳, 現職, 自由民主党)
- 背景: 福岡県出身。1959年1月20日生まれ。福岡県立京都高等学校、明治大学商学部卒業。1996年に福岡青年会議所理事長、1999年に日本青年会議所第48代会頭を務め、2001年に参議院福岡県選挙区から初当選。現在は参議院自民党幹事長を務める。
- 特徴: 経済対策によるGDPの成長と賃上げの達成を強調。物価高対策、特にガソリン価格の引き下げや電力・ガス料金の補助に言及し、現金給付や医療・介護分野の処遇改善といった国民生活支援策についても触れるる。
- 政党公約: 自民党の公約「日本を動かす 暮らしを豊かに」では、強い経済、豊かな暮らし(国民所得5割増)、揺るぎない日本(外交・安全保障)を掲げる。
- 参考URL: 自民党公約
伊藤博文 (56歳, 新人, 日本維新の会)
- 背景: 観光会社経営 元参院議員秘書。九州電子技術専門学校。
- 特徴: 企業献金や団体献金を受け取らないこと、政治家の給与カット、教育の無償化といった政策を柱としている。また、自身の経歴や祖父の戦没体験に触れ、高齢者の安心した暮らしや若者の未来のための政治の必要性を訴える。
- 政党公約: 日本維新の会の公約では、地方分権の推進、行政改革、教育の質向上を掲げる。国と地方の役割分担の明確化や、教育予算の増額を求めている。
- 参考URL: 日本維新の会
山口湧人 (35歳, 新人, 日本共産党)
- 背景: 党県委員 元福岡市議・障害者支援施設職員。福岡大大濠高。
- 特徴: 自民党・公明党の与党を少数に追い込み、新しい政治を切り開くことを目指す選挙の重要性を強調。物価高騰による国民生活の困窮を強く訴え、その解決策として消費税の5%への一律減税とインボイス制度の廃止を提案。また、最低賃金を時給1500円に引き上げる大幅な賃上げと、そのための大企業への課税による中小企業への直接支援の必要性を主張。
- 政党公約: 日本共産党の公約では、物価高対策として消費税の引き下げや現金給付を提案。平和憲法の守護、社会保障の拡充(医療・年金)、少子化対策(子育て支援)を柱としている。
- 参考URL: 日本共産党公約
沖園理恵 (50歳, 新人, れいわ新選組)
- 背景: 食品販売会社員 元私立高校非正規職員・司法書士事務所職員。福岡大院。
- 特徴: 消費税の廃止を強く訴え、現在の経済格差や国民の生活苦は政治の失敗によるものだと主張。投票を通じて政治を変えることの重要性を力説し、国民一人ひとりの行動が集まれば大きな力になると呼びかけてる。
また、教育費の無償化や奨学金返済の全額免除、そして誰もが安心して暮らせる社会の実現を政策の柱として掲げ、日米関係の見直しにも言及。 - 政党公約: れいわ新選組の具体的な公約は確認できていないが、党の政策として障がい者権利の拡大、生活保護の充実、憲法改正の慎重な姿勢を掲げている。
- 参考URL: れいわ新選組
森健太郎 (47歳, 新人, 日本保守党)
- 背景: ITエンジニア〈元〉IT会社役員・DeNA社員。福岡大。
- 特徴: 外国人労働者政策、土地買収問題、物価高騰と税金問題、そして再生可能エネルギーへの課金といった政府の政策を厳しく批判し、それらが日本経済と社会を破壊していると主張。
他の既存政党の政策も批判の対象とし、日本保守党が日本の伝統、文化、そして誇りを守る唯一の選択肢であると強調。 - 政党公約: 党の政策として憲法改正、伝統の尊重、経済の活性化を掲げている。
- 参考URL: 日本保守党
那須敬子 (65歳, 新人, 社会民主党)
- 背景: 元衆院議員秘書・高校教諭。九大院。
- 特徴: 「命と暮らしファースト」を掲げ、自民党政治の終焉と平等な社会の実現を強く訴える。 具体的には、防衛費の削減による生活費の確保、消費税ゼロ化、大企業への課税強化といった経済政策を提唱。 さらに、教育の無償化、奨学金の給与型への移行、介護保険制度の拡充など、社会保障の充実を訴え、平和憲法の遵守と軍事費の抑制の重要性を強調。
- 政党公約: 社会民主党の具体的な公約は確認できていないが、党の政策として消費税の引き下げ、社会保障の拡充、平和憲法の守護を掲げている。
- 参考URL: 社会民主党
村上成俊 (54歳, 新人, NHK党)
- 背景: NHK党支部長・美容クリニックコンサル会社代表。筑豊高。
- 特徴: 年金受給者へのNHK受信料の無償化を公約として掲げ、NHKのスクランブル放送化を強く訴える。さらに、村上氏は若者の所得向上や少子化問題への取り組みについても言及。
- 政党公約: NHK党の公約では、NHKの改革、受信料の廃止を掲げる。
- 参考URL: NHK党
富永正博 (47歳, 新人, 日本誠真会)
- 背景: 日本誠真会の新人で、元福岡市議会議員。
- 特徴: 日本を日本人自身の手に取り戻すことを訴え、そのために日本国憲法を無効とし、破棄することの重要性を強調。現行憲法はアメリカによって日本弱体化のために押し付けられたものであり、国際法および旧帝国憲に違反していると主張。
憲法改正や護憲、創憲ではなく、憲法を「破棄」し、正当な憲法に戻すことこそが、経済や農業、教育、国防といった日本のあらゆる問題を解決する根本治療であると訴える。
主要な争点
福岡選挙区では、以下の主要な争点が注目されています:
- インフレ対策: 物価上昇が家計に影響を与えており、経済政策が焦点。
- 社会保障: 高齢化社会における医療・年金制度の強化。
- 少子化: 出生率低下への対策や子育て支援策。 これらの問題は、福岡の都市部と農村部の両方で重要な関心事であり、候補者の政策提案が有権者の選択に影響を与えるでしょう。
選挙の展望
現職3名(自民党、立憲民主党、公明党)は、知名度と組織力で有利ですが、自民党に対する不満の高まりが野党や新党に追い風となる可能性があります。
特に、れいわ新選組や参政党などの新興政党は、若者や変化を求める有権者に訴求する可能性があります。しかし、13人の候補者による票の分散は、現職に有利に働く可能性もあります。
選挙は「誰かのため」ではなく、「自分の未来のため」に参加するもの。
ぜひ今回の選挙では、より暮らしやすい社会をつくっていくため、私たちの1票を「意思ある選択」として投じましょう。